白魔法クラスの大忍術師

「俺たちニンジャが──『正義の味方』になってやるよ」

白魔法クラスの大忍術師 (MF文庫J)

白魔法クラスの大忍術師 (MF文庫J)

 

魔法世界にニンジャ、というのはファンタジーでそれなりにある設定ですが本作は主人公が本当に表向き忍んでいて暗躍する部分をメインに描いているのが面白かった。

主人公が洞察力に優れていて、相手の仕草や周りの状況から推察・さらには相手を思い通りに操って自分が有利な状況に持って行く話なのでロジックで攻めていく部分が好み。

 

ニンジャが過去に大きな裏切りをやった事で徹底的に嫌われているという世界(ニンジャを見たらとりあえず殺せ、という世界観)で、じゃあニンジャは悪の裏家業的なのか? というとそうでもなく。

どっちかというと世界の影で、平和を保つために暗躍しているような描き方をしてるので話的にはわりとスケールは大きい感じ。

 

 

由比ガ浜機械修理相談所

「私達は、機械なんでしょ? こんな感情、欲しくなかった。それともこの悲しみも、ニセモノなの? ねえ、教えて。教えてよ……」

由比ガ浜機械修理相談所 (DENGEKI)

由比ガ浜機械修理相談所 (DENGEKI)

 

 結さんの想いが切ないわ……。じんわりと胸にくる恋愛小説だったと思います。

TOWAという人と変わらない心をもつアンドロイドの少女と、TOWAの製造に関わって起きてしまったことをトラウマに持ってしまった青年の間に芽生えた恋。

いや、ほんと不器用で焦れったい感じがよい。結のオーナーが金策のため、青年に売買の仲介頼まれてしかも同居することになった前半部分の初々しさというか童貞青年が結
さんと顔が触れそうになるとか距離が縮まった時の反応が青臭くて、/// と読んでいる方が赤面するこっぱずかしさがたまらない。

 

そんな砂糖が口から漏れるような描写が、過去のある事件が再び浮かび上がることで暗転。心あるアンドロイドも「モノ」なのか「ヒト」なのか、というテーマの部分で一気にシリアスな話に。結構重めな話で、主人公が最初に調整(育成)を行ったアンの身に起こった事は読んでいても辛かった……。

終盤にアン、ヨネ、結。主人公が関わったTOWAたちの「想い」が重なった所に来ると、ぐっと来てちょっと泣きそうに……。

 

 

本作で良かったのはやはり、結さんの一途な想いでしょうね。「好き」という気持ちをずっと持ち続けたからの結末が良かったなぁと。

アンの絵本のエピソードはずるいよなぁ、ああいうのめっちゃ弱いのでもうやられたなぁって感じ。

 

わりとストレートな恋愛モノで、心を持ったアンドロイドとの恋愛に興味が元々あってそういうジャンルが大好きだったので楽しめました。

りゅうおうのおしごと! 11

「おはようございます。姉弟子」

 三段リーグで三連敗して絶望した銀子が自らの死を望む衝撃の10巻ラストから、再生するまでのエピソードを、丸々1巻を銀子メインにして書ききってた!

いや、凄く良かった。本当に最高の恋愛モノを読ませてくれたと思う。幼い時からのブレない、八一への好き。その想いが清滝一門の師匠、桂香や明石先生にマエストロや鏡州など銀子を取り巻く人たちに支えられ、命を繋いで八一からやっと……。

もう、読み始めたら止まらなくて一気に読み切ってしまいました。

本当なら、11というナンバリングではなく番外編としての位置づけもあったと思う(というかそっちが普通?)。でも、敢えて11にしているのは銀子の想いが、そして彼女が悪手だったのでは? と後悔すらしている行動が全て八一の原動力になっていたという事なんだろうと思う。八一と銀子の二人で一つの将棋で駈けた生き方があればこそ成り立ったから、「りゅうおうのおしごと!」という世界があるという事なんだと勝手に思ってます。

 

将棋が二人いなければ指せないように、恋愛も愛し合う二人がいなければできない。そして、二人を支える人たちと過ごした年月の結果が終盤の三段リーグ「創多戦」に全て叩き付けられている描写はすごかった……。

葛藤する中で銀子が右手でスカートをきつく握りしめる、という一文。まさに清滝一門で育ったからなんだよな、と感じさせるような所がいくつもあって本当にぐっと来ます……。

 

11巻は銀子の心情がダダ漏れの巻で、心に残る台詞が沢山あって付箋貼りまくって増した。ぐっとくる映像的な描写も多く、11巻をベースにアニメの劇場版やって欲しいな、と思ったり。

 

あとアレです。11巻を読んでしまうと八一ではないけれど、もう姉弟子とは呼べないですよね……。もう取り戻したわけですし、今思うと呪いの言葉に思えてしまう。

夏へのトンネル、さよならの出口

五秒くらいそうしていた。外では大体六時間に相当するキス。

 

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

 

 

ああ、まさに真夏に読んで良かった! そう思える良い恋愛モノでした。喪失感を抱えてただ生きていた少年が、幾つもの大切なものを取り戻して掛け替えのない一人の少女を得る話。ボーイ・ミーツ・ガールが好きなら、素直に楽しめると思います。

 

主人公が抱える後悔は、とても大きく読んでいて自分ならどうする……? というヘヴィーな背景なのに高校生ならではの瑞々しさや生々しい悩みを見せつつ、清々しい読後の余韻を与えてくれてやられたなぁと。

疾走感とか衝動とか。感情に訴える部分が強い作品だったと思います。故に細かいことを気にする人には向かないかも? 逆に、共感しやすい人にはハマりそう。自分は後者なので、終章前後はもうなんか心揺さぶられてた感じで主人公とヒロインのもどかしい気持ちが自分のモノとして思えてしまうような。だから、エピローグの雰囲気がとても良かったなぁ……。

 

さよならの出口。その意味は読み終えるとなるほどなぁ、と噛みしめるような何かがあってそういう意味でも良かったと思います。

 

夏らしい透明感と彩度の高さを文章の描写でも感じられたので、表紙に惹かれたら素直に手に取って読んで損はないです、きっと。

天気の子

見て来ました。

自分のTwitterのTLを見ていると、結構好評だったので早く行かねばと思っていたのですが、有休が不意に取れたので朝一に行ってきました。

 

後半ネタバレしてる部分があるので、そういうのが嫌いな人はページを閉じていただければ。

 

さて、感想。

 

直球なボーイ・ミーツ・ガールものとして楽しめました。

ストーリーはいろいろ踏み込んで来たなぁという感じで、刺さる人には深く刺さるような作品だったかな、というのが見終えたあとの感想。

自分はぶっすり、串刺しな感じです。あ、来たわコレみたいな。繰り返してみてみたいタイプで、正直少し落ち着いたらまた劇場に行きたいです。BDも買っちゃおうでしょうーね。多分。

 

主人公やヒロイン、彼等を取り巻くキャラが自分の好みなタイプであったのも大きいと思います。

映像は今回も大変美しく、どのシーンもすごいのですが雨が上がって夕焼けが現れていくシーンは肌が粟立つほど痺れました。この映像だけでも映画館の大きなスクリーンで見てよかった! と思いましたもの。

 

正直に言うと見ている最初の方は割と不安がありました。開始から15分ほどの描写が主人公の行動の動機について説明があまりなく、何で? というモヤモヤした気持ちが続いて。ただその間も映像に惹きつけられてしまうのはさすがです。

ただ、この不安は杞憂ですぐにこれはイケるという思いに変わりました。主人公の帆高とヒロインの陽菜が出会ってからはキャラの立ち位置がはっきりし、それぞれの魅力を見せるエピソードを楽しく表現しているので作品の中へ一気に引き込まれます。

 

あとは、物語が動いていろいろ起きて行くのですが、あとは必死に付いて行くだけ。その加速感が心地よい! いやー見に来てよかったわ、と何回思っただろうか。

 

もうネタバレになっちゃうから、これ以降は自己責任で。

劇場で既に視聴済みの方は、もう少しお付き合いしていただければ。

 

 

 

 

 

 

 

では。

 

世界と好きな女の子、どっちを選ぶか。直球で答えを出していたのに痺れました。世界より、好きな女の子の方が大事だという答え。そして、その後の水没した東京の風景を写しその判断の結果を見せ付けた上で、その世界で生活する人々の日常が描く。

 

どうせどちらを選択しても後悔するかもしれないのなら、女の子救う選択の方が、まだ納得できるだろう? とボクは思うので、帆高の選択はしっくりきました。

新海監督、容赦ないなぁとおもったけれど悲愴感は全くなかったですね。ラストに陽菜の笑顔で締めていましたから。あとそういう時代が来た、と世間も受け入れている様子を入れてフォローしていましたし。

 

この作品のやりたかったことだと思うのですが、帆高が晴れを捨て、陽菜を生贄にしないという選択をした。僕らの選択が世界を変えたんだ、という言葉がとても力強くて好き。若い子ならではの部分もあると思うが、大切で好きな女の子を守れたんだ! という自負であり、決して否定させない大事な選択だったと思っていることだから。

こういう眩しさっていいな、と思う。若さの特権でもありますから。

理屈より感情でいいじゃん。

 

あと周りのキャラも立っていてグッとくる。おじさん代表の須賀、小学生ですでにジゴロな凪きゅん。この二人のいい味出していて、目が離せないかった。

 

警察に追われた帆高にさっさと自首してなぁなぁで済ませようと大人の判断をする須賀と、消えた陽菜を愚直に追い続けようとする帆高のシーン。あの時の二人の気持ちが分かるだけにもどかしく、スクリーンに一層惹きつけられたと思う。あそこの一連の流れは大好きですね。

 

演出面だと徹底した描き込みと本物の商号の利用(Yahoo! やバニラの求人広告トラックw)などで、スクリーンの中を現実のように見せることで、物語終盤の非日常な光景があり得そうな本物のように思わせるのは印象的でした。

そんな変わってしまった世界でも、人は生きて行きやがて日常になっていくというのをこれでもか、と見せつけているようです。こういうのはアニメなどの映像作品ならではのやり方だなぁと素直に感動しました。

 

 

と、まぁとりとめも無い長文になってしまいましたが、吐き出さずにはいられなかった次第。

見た人と感想を言い合いたいような作品だったと思います。

かぐや様は告らせたい 15巻

「それが、私が会長にあげられるロマンティックです」

キスをしてお互いの想いを確認した二人。色々意識しすぎて、テンパってしまう白銀がかぐやのことをヘンに考えすぎてすれ違ってしまうが──。

 

15巻もさらに面白くなっていますね! かぐや様が自ら行動を起こして進んだ関係、そこからの描かれる展開がまた素敵な流れに。分かりやすいかぐや様の「手を繋ぎたいなー」アピールを悉く曲解して、言われてしまう「お可愛いこと」。

白銀、お前ー! と思いつつ、童貞青年だと案外こんなもんかもなぁ、と思わせなくも無いさじ加減が上手いな、とホント思います。

 

この後、今度はかぐや様の内面に入り悶々と苦悩していく話がまた読んでいてぐっとくる。こういうキャラに深みを与えるエピソードを盛り込めるのは本当に良いなぁと思います。こういう所、ボクは大好きですね。

 

その上で二人がお互いの心境を知るようになるまでの見せ方も良くて、 最後のページを繰ると「もう終わってしまった……」そして、早く続き読みた〜い!! となってしまう。ずるい(なら本誌読め、ということですね。わかります)

 

かぐや様はシリアスとコメディ部分の混ぜ方が絶妙でたまりません。

ハーサカとの恋の嘘AIシミュレーションや奇祭となったクリスマス。白銀がチョイスしたプレゼントとか。センスが素敵。

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?

「はい、小型戦車のお刺身だよっ!」

相次ぐ 戦争とパンデミックで人類は地球の盟主から陥落し、自らの科学技術が壊した自然に怯えながら生きる24世紀。旧東京都の片隅で様々な勢力が手出し出来ない非武装地帯の食堂を切り盛りする美少女料理人と同じく給仕兼食材仕入れの美少女が巻き起こす、美食礼賛。

 

SFxファンタジーx美少女(百合風味)x食=まぜて美味しい。

様々な要素ぶち込んでいるのに絶妙なさじ加減のお陰で上手く調和していて楽しめる。というか文章が軽妙でテンポが良いのでさくさく読み進められるのも大きいです。

wヒロインの調理担当のウカと食材仕入れ(狩り)担当のリコの凸凹コンビが引き起こす騒動が、全て食事につながるのですがその食材が、うんSF。

戦車食べるってなによ? と思うのは本編を読んでのお楽しみ。自分は心地良い驚きで、すごいな! と感嘆したくらいで。これは本当に発想がすごかった。

 

ジャンルで言うとSFなんだろうけど、ハード寄りに言っていないのがまた上手いさじ加減。本編中で出てくるSFガジェットの定義はどれも面白くて、独特な世界観を醸し出しています。ただそれはあくまでもスパイスにして、メインはウカがリコに持つラブぃ感情を軸に、人情モノで攻めてくるのでこういうのが好きな自分は喜んで受けて立つような感じ。

 

世界観がとてもビジュアル映えしますし、サブキャラも個性があってとても賑やかで楽しい話です。これは、アニメにしたら面白いだろうなぁと思いました。おそらく映像化向けな作品かな、と思います。

 

あと、90年代的な懐かしさがあるのに今風の新しさがあってそういう意味でも凄いなーと思いました。