プロペラオペラ

「カイルとガメリア人が気に入らないから全力で殴る。おれが戦う理由はそれだけだ。死ぬためには戦わない」

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

 

 男主人公のツンデレはアリだと思いますか? 自分は断然ありだと思います。

格好いい台詞吐いていますが、根本は惚れた女を奪われないために強国に喧嘩を売るというのが痺れます。

史実の日米大戦をモチーフに、現実では存在しない高度1200mに存在する第二の海上と呼ぶべき海戦の戦記モノ。でも、その根幹がラブロマンスもので読んでいてにやにやできる部分が多く、恋愛モノが読みたいモードに入っていた自分は大変楽しめました。

しかもヒロインが皇王家の姫で、気品ある気高い系なのもツボで勘違い(?)で一度こっぴどく振られたヒロインに全身全霊を賭けて守ろうとする主人公のクロトが格好良くていいなーと。ヒロインのイザヤには照れ隠しで憎まれ口を常に叩くのも高ポイント。男の子の見栄というか、分かる分かるみたいなとこが有って好き。

 

あと、強力な悪役の存在がいいです。端的に言えば、イザヤに横恋慕しているイカレ野郎なんですが、イカレ方が半端ない。大統領になってイザヤとクロトの母国、戦争で滅ぼして奪えばいいかなーとスケールがでかい。敵役とクロトの因縁がまた上手い感じで絶対に滅ぼすしか無いよね、というシチュエーションに持って行ってる。あとはどう苦しめられつつも、最後にやっつけるか。楽しみ。めっちゃ苦境になって人死にたくさんでそうですが。

 

犬村さんの得意とする駆逐艦内の乗員達のくだけたしょーもないところ(姫さまたちの「聖水」*をあがめるとか)と、命を張って毅然と任務に邁進するところのオン/オフの描き分けも魅力的でした。一般兵員の悲哀を感じさせるエピソード(平祐の姉の話とか)などもぐっとくるし、人情モノ的な部分もうまいよね、という感じで。

 

クライマックスへ向けた流れと、味方のピンチ。それを跳ね返すどんでん返しの見せ方もよく、良い意味で緩さと緊張感が両立していたと思います。

追憶の頃からもそうですが、映像的な綺麗さの描写もよかったなー。

空にあるもう一つの「海上」。セラス粒子という、空に船が疾走するというものなのですが、エネルギーと反応して七色に輝くという架空の設定が凄く映える描き方なんですよ。これは色が付いて映像になったら綺麗でしょうね……。

 

戦記モノとしてもしっかりと描かれていますので、そういうのが好きな人も楽しめるかと。

はやく続き読みたいですね。

 

* いわゆるしーしーな「聖水」ではありませんが、似たようなモノ。