不堕落なルイシュ 2

「宿命に身を任せるなんてどれだけ堕落したんだ、涙珠?」

生涯に影響が残る傷を負って、法律により処理──つまり、処刑される那智を生かすために、保護権を兄から貰おうとするミタマ達の逃走の果ては……。

予想もしなかった、クライマックスでした。
ホント、終盤での流れはえー!?という驚き。2巻が始まってのディストピアを感じさせながら、ラノベらしいノリで笑わせたり、おぃおぃという流れからとんだ急転直下。
やられましたね、正直。ここまで、ぶっ飛んでかつ鋭い刃を突きつけてくるとは。作者、鬼ですよ、本当。

那智が帝国の皇帝だったとは……。そして、究極の二者択一。
そう、主人公のミタマが那智を生かすか、涙珠を生かすかの生殺与奪の状況が与えられて。

答えは、出ていた。しかし、その場面に持って行くのかっ、というのが読んでいた時の気持ち。
そして、読み手の通りに進むのですが。
なるほど、良く分かります。分かりますが故に、厳しい話だったなぁと。
そして、この話が失われた家族の絆を取り戻すものだったというブレがなかった。
そういう意味ですっきりとした結末だったと思います。
涙珠の想いを受けると、倫理がどのとかはとりあえず、置いちゃいますし。

ディストピアディストピアたる状況も取り除かれ、家族の絆を取り戻した上で、ミタマと涙珠がどうなるのか。
それは読み手の中で、というのはずるいけれど良い終わり方だったのかな、と思います。

キャラがどれも魅力的ですし、ストーリーも面白いと思うのですが、扱う題材ゆえに間口が狭いのが残念かな。
自分は大好きなんですが、奨めにくい!

興味を持ったら読んでみてみて! という程度にしか言えないのが歯がゆいですねぇ。
これだけぶっ飛んだ世界観や面白いキャラでも、ラストが賛否別れる感じですし、ダメだ! という人の気持ちも分かるので。

那智、本当にお疲れ様。彼女が孤独で終わらなかったこと。それが救いだったのかな、と思う話でした。