空の青さを知る人よ

(※ネタバレ含むので情報無しに映画を見ようとする方はブラウザバックを)

 

長井龍雪監督の映画、『空の青さを知る人よ』を見て来ました。

 

TwitterのTLがざわめいていて、折角時間もあるから見てみようかな? という割と軽いノリで入ったのですが……すごく好みな話でした。

自分が好きな切なくもどかしい少女の恋愛話と、夢が現実に重みにすり減らされて適度に合わせてしまうおっさんの哀愁ある話。どっちも大好物なのですが、それが合体してぐっとくるストーリーに。やられましたネ、良い意味で。

 

メインのヒロインである、女子高生のあおいの『二度目の初恋』の描かれ方がとても感情を揺さぶるのでスクリーンに釘付け。幼い時に憧れだったお兄ちゃんの「しんの」が、自分と同じ年齢の時に再び出会うという不思議な体験。そして、惹きつけられて恋に落ちてしまう。そこに至るまでの描写がとても上手いんですよ、すごく自然で。

 

ああ、好きになっちゃうよなーと。そして、あおいにとって大切なもう一人の姉であるあかねへの罪悪感との板挟み。そして、本当にあかねも大好きだからしんのを奪うというのではなく、悩む。そんな懊悩をエピソードを積み重ねて、最後にあおいの涙に綺麗に落としていくところは長井さんの真骨頂だなぁと感じました。

ずるいよなー。でもうまいよなー。ああ魅せられたら、納得するしかないじゃないかと。

また長井さんが優しいなあと感じたのは、あおいに思いを寄せているツグの存在ですね。小学生だけどあおいのことが本当に好きで、幼い初恋のくせに将来設計ばっちりすぎて、正直に言えばひくわーってレベル。ああ、ここまで考えている子が傍にいたら、あおいに告白して結婚して幸せにするだろうなーと、想像させる配置。ずるい。でもそんな長井さんが大好きです。やっぱりハッピーエンドが一番いいですもの。

 

あおちゃんがとっても良かったよ! というのが1番目なら、2番目は慎之介の描写。

31歳のおっさんである。高校卒業後ビッグになるぜ、と東京に出てから音信不通。夢破れ、ただ辛うじて音楽に携わる仕事は続けられているという宙ぶらりんな状態。いわゆる『ダメ人間予備軍』なんだけど、共感してしまう(ダメ人間なので)

そんな疲れて現実的な生活をしている「慎之介」と、夢に溢れている高校生の「しんの」。BeforeとAfterが同時に描かれている様が、見ている方もおっさんだとどうなるか?

 

胸に後悔という鉛玉がマシンガンで撃ち抜かれる訳です。撃ち抜かれない人もいると思いますが、結構な人はずたぼろになる野では無いでしょうか。私は肉片になっちゃいますね!(いばれねー)。とまぁ、心に後ろ暗い影を持つ人間にとって、慎之介としんのはガチで苦しい。慎之介に感情移入しちゃうんですよ、「ああ、わかるわかる……」って。

そんな彼が高校生の自分に叱咤されるところはまさに死体蹴りですよネ☆ HPがゴリゴリ削られるわけですけど、故にまたスクリーンに目が離せなくなってしまう。

慎之介の描写にも長井さんがやさしいなぁと思わせるのは、再び気力を漲らせて前に進む姿を見せる所。そしてタイトルロールでそれが上手く言ったことを匂わせている。僕はそういう所が良い余韻だなあと感じました。過程がきちんと描かれているなら、ご都合主義でいいじゃないかと。フィクションなら気持ち良くENDマークを見て余韻に浸れるのが正義、だと思いますので。

 

ほんと、素敵な作品をありがとうございました。

初見だけではものたりないので、何度かまた映画館で見てみよう。そう思わせる作品でした。