ヒトカケラ

「人間が人間を好きになる。それの何がおかしいっていうんだ?」

ヒトカケラ (MF文庫J)

ヒトカケラ (MF文庫J)

片想いをしている娘、蓬莱ありすに相談されたこと。それは、彼女の「かけら」を探すのを手伝って欲しい、という事だった。かけら。それは、人類を滅ぼすことができるものだという。そして、彼女は人類を絶滅させるか、残すかを裁定するために宇宙人から送り込まれたのだと──。

ああ、ホントにとても好きな話ですよ。切なくて、残酷で。そしてとても優しい物語でした。三人のヒロインがどの娘も印象的で、ストーリーと共に良く描かれていたと思います。

好きな娘が、消えちゃうんですよ。裁定者として存在するありすが人類を生かすと思う時は、彼女が誰か人間を好きになって自らキスしたいと願った時……。けれど、キスをすると人類の命運を決め終え、任務が完了したので彼女は消滅する。
ありすが人を好きになることがなければ、人類滅亡。どっちに転んでも、ありすが消えるという選択肢を突きつけられる主人公がツライなぁ。

けれど、彼を支えてくれる娘がいる。彼のことを想いながらも主人公とありすの短い日々を陰から手を差し伸べていた杏。ラストに彼女が屋上にあがってきて主人公に声を掛けるシーンは、読後に良い感じで余韻を残したと思います。

ありすと杏は表のメインヒロインとして活躍していましたが、実は一番惹かれたヒロインは麗華。一歩引いたサブヒロイン的立場で関わってくるので、登場シーンは少ない。ですが、杏編での彼女の姿がいい。
本音トークの性格が男前すぎで、ツボ。偽悪的に見せていて杏に的確なアドバイスを与え続けるのですからね。
あと、主人公に対して純粋な恋をしている姿が好きかな。ある意味、フィクションだろうけど、なんか素敵で。叶えられない恋というのもまた惹きつけられるものだと。

「……しゃあねえ。じゃあ、女にだけ当てはまる生きている意味ってのを教えてやるよ」
「──好きな男の、そばにいることだよ」

たばこを吹かしながら、こんな台詞がはまる格好良い女はとても大好きなのですよ。