葵 ヒカルが地球にいたころ…… 1

「赤城くんは、ヒカルの友達です」

是光と一度だけ会話を交わし、別れ際に頼み事があると言われたままクラスメイトのヒカル突然亡くなった。数多の女性が想いを寄せ、また恋多き少年ヒカルと不良と恐れられている是光。接点がないハズのヒカルが幽霊となって取り憑き、心残りを晴らすために協力してくれと言われて──。

切なくて温かい友情モノで、悲しいけれどひたむきな恋物語でした。いや、ホントにそれぞれの人の願いを縦に、想いを横に織り込んだ力強い話でとても好きです。
是光の渾身(捨て身かも)の協力の結果、ヒカルと彼の婚約者である葵とのすれ違い続けていた想いが繋がった所は良かったなぁ。
でもこの話で一番感じ入ったのは、是光とヒカルが掛け替えのない友人になっていく描写です。正反対の二人が求めていた親友。そんな関係になった二人は読んでいて心地良いけれど、やがて訪れる別れを想うと切ない。
出会いは偶然かもしれない。けれど、親友になるのは求め与え合う必然なんですよね……。

葵はどの登場人物もしっかりとした背景があって、「なるほど、彼(彼女)ならこうするわ」と納得させる存在感も凄いなぁと思います。是光やヒカルの過去が今の彼等にきちんと繋がり、その境遇ゆえに二人がお互いに心を開く描写に流れていくのはもう、脱帽するしかないです。

ヒロインについては今回メインの葵より、帆夏が自分的には好き。というか自分の嗜好ど真ん中なんですもん。耳年増で本当の恋に不器用な帆夏が是光と喧嘩したり、葵へのアタック(帆夏の勘違いなのだけど)に協力するなかで是光に『きゅんっ』となるのはヤバい。最高にハマるシチュエーションです。

色々と含みを残しつつ次巻へ続いているので、物語がどう動くのか興味が湧きます。