ミスマルカ興国物語 X

「我が心の闇を覗いた者には、永劫の罪と罰を与える」

魔王杯復活の最後の紋章があると思われる遺跡へ向かったマヒロ。帝国二番姫のユリカを伴って、厳重な侵入者対策が施されたセキュリティを突破した先には──。

さすが林トモアキ! そう唸るしか無い10巻でした。コメディ部分でユリカ様の可愛い部分を存分に魅せて悶えさせ、ストーリーの核心部分で人類の辿った壮絶な過去に息を呑ませる。そして、古くからの読者には郷愁と、その後を思わせる切なさを。

今まではワキに押さえていたユリカ様が全面に押し出されていたのがハマりました。隠していた趣味・趣向が暴露された時の慌てようがもう、可愛いのなんの。普段冷静なユリカ様からは想像出来ないリアクションが素晴らしい。P125の挿絵はGJですよね。

うって変わってシリアスな部分はガチで文明最終期の人類の想像を絶する酷さが浮き彫りになり、その容赦なさもまた林トモアキだなぁ、と思わせる内容。人類防衛の英雄であった人間の白骨化した遺体が何の感情もなく投げ捨てられるシーンは印象深い。
人類防衛の最後の希望とも言える事実が見せる所が、とてももの悲しくて。けれど、それによって生き延びることが出来た今を考えると……。
だから、マヒロが最後に取った行動が凄く腑におちます。
「……よかった」と紡がれた台詞は、本当に救いであったかと。

そして。いずれ出てくるだろうと思っていた彼女。
──亡霊。神が、堕ちるのではなく。彼女もまた果たせなかった約束のために、残っているのかと思うと胸にこう、グッくるものが。
あと、今回出てきたキャラ。テトラ・システムの延長線を彷彿させるのですが、どうなんでしょうか……。

こういう過去とのクロスする所が自分にはまた、たまらないのです。
確かに未読な人にとっては障害なんでしょうけれど……。
でも、これが無かったら昔から読んでいる自分にとっては『何故林トモアキを読むのか』の楽しみの一要素が抜けちゃうし。
まぁ、正解は無いんでしょうね……。