煉獄姫

「だったらめいれいするわ、フォグ」
「わたしと……ともだちになって」

煉獄姫 (電撃文庫)

煉獄姫 (電撃文庫)

王女と彼女を守る騎士、という王道な設定でここまでよく読ませる物語を書いたモノだなぁ、と感嘆。
と、王女と騎士の部分だけみれば、王道モノなのですが設定が嫌らしくて(誉め言葉)かなり過酷というか、残酷な話だと思う。
それでいて、陰惨になっていないのは王女のアルトの無垢さと彼女を守るという事に総てを賭けているフォグの姿なんでしょう。

アルトの存在がとても切ない。強力な力を持つ反面、人の命を蝕む体質が人としてのふれあうことが出来ない。
父である国王からも遠ざけられているのに、王命で任務(元凶の力で国家の敵を抹殺)を果たすことで父に喜んでもらえるという無邪気さが読んでいると胸が痛い。
ただ、彼女を守ろうとするフォグの真摯さやアルト付きメイドのイオの存在で救われているので、作中で翻弄されてもほっとできる。

とはいえ、国家規模でのストーリーのようで既にラストでは黒幕がばっちり出てきており今後はもっと厳しくなっていくのだろうなぁ。アルトに初めて出来た友人もあっさり殺されてしまうくらいだし……。

設定は若干凝り性かな、って気もします。が、世界の雰囲気を醸し出しているし、キャラの存在感をきちんとさせているので今くらいのままドラマ部分が進んでいけばいいな、と。
練術というアルトとフォグを縛り付ける宿命が、色々な人間の意図や想いを巻き込んで世界が動き始めるという流れは物語を前にひっぱる力としては十分なものだと思います。