とある飛空士への恋歌 4

「生きろ!!」

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)

読んでいた圧倒された4巻。クレア=ニナの総てを知った上での、カルのクレアへの言葉「生きろ!!」という叫びが万感の思いを投げかけてきました。
静と動のバランスが上手くて、始めから引き込まれてしまった巻でした。友人達を失って、虚脱している生徒達。その中で、一人安全な場所にいた事への重荷とカルへの想いが合わさるクレアの心中。
そして、クレアとカルがお互いの本当の正体をさらけ出したときの葛藤。
もう、これだけでもドラマが動いて心が掴まれてしまう。
クレアがニナとしったカルを想うアリエルの取った行動がまた、ぐっとくる。

「だから、また一緒に飛ぼう」

アリエルがクレアに放った言葉が力強く煌めいた。閉じこもり、そのまま人形に戻ろうとしたクレアを動かすきっかけとなる場面は、すごいなと感じ入りました。
アリエルは、戦闘機編隊で言うところの重要な役割を担う、水先案内人なんですね。クレアを、そしてカルを導くという意味で。
間違いなく、メインヒロインになれないのだけど彼女がいなければ成り立たない。
そういう意味で、先王の私生児であるイグナシオもそう。憎いはずのカルを立ち直らせる一端を担う。

憎しみや愛情でもつれた絆の行き着く先、つまり恩讐の彼方で迎える結末、というのが追憶を含めた飛空士シリーズの根幹なのだな、と思いました。
そして、多分。次巻が最期だと思われますが様々な絆で撚られた物語がどのような結末を見せるのかとても楽しみです。

名脇役を務めたノリピーとベンジーが最期に戻ってきた時は本当に救われましたね。還らずでも、綺麗ですけれど読みたいのは心好く物語であり、戦記ではないのであれで大正解だと思っています。

にしても、三式弾ですか。対空榴弾を出す所はマニアックでしたねぇ。そのくせ、こういうのを出して、超弩級戦艦の砲戦であれだけ必要な要素を記述しつつ、コリオリの力の記述がないと突っ込むのはヤボだぞ(って自分ですか