空色パンデミック ３

「ねぇ、景。わたしはここにいるよ」

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)

怒濤と錯誤とセカイ系の第三巻。正直、本田先生にしてやられたという感じでした。
元々セカイ系を逆手にとった作品ですが、本著を利用したメタものまで加えてくれるとは……。ええ、本当に楽しませて貰いました。
マトリーショカ人形。開いたら、また人形がいるという錯誤の連続でどれが本当なのか、もしかしたら……と思わせつつ「本当の」ラストまで持って行く疾走感が心地よかったと思います。

それにしても、不思議な巻でもありました。景が思い焦がれている結衣が途中でふいと、消えるのですが存在感がきちんとあって物語を引っ張っていく。まさに、ボーイミーツガールの真骨頂かと思います。
それでいて、他のヒロインの絡ませ方が秀逸。子供になってしまった景に晴がキスをするわ、新キャラに誘惑されて結婚の約束をしてしまうわ……。すごいとしか思えない。

最期は、空パンらしく「空想病」らしい結末を迎えるので安心。
もう、読み手をくらくらさせるという意味では、お酒みたいなものですね。心地よく騙された、と思わせる所が憎い。

一巻から続いた、一連の騒動にひとまず区切りが付きましたが続刊もあるようですので新しい酩酊を期待しております。

それにしても、晴って魔性のポジションですね。メインヒロインは間違いなく、結衣さんなのですが要所要所で押さえてくるのが、もう。
正直、キャラ的には晴の方が立っているというか惹かれています。