円環少女 12

「”ままならない“ものとおつきあいするから、愛って必要なんじゃないかしら」

円環少女  (12)真なる悪鬼 (角川スニーカー文庫)

円環少女 (12)真なる悪鬼 (角川スニーカー文庫)

死と血と悲痛の惨劇は続く──。
冒頭、数十ページの絆の描写が、痛かった。死すら許されない、未来からの干渉──再演魔術の恐ろしさを知らされて、中盤にある始まりの再演魔術師の操られた死を見せ付ける。
どんだけ、サディストなんだろう、作者はと思わせる構成に震えた。

世界は動き、神無き地獄が選択された再演世界へ再構築されていくのは凄いと思いました。その中で、インターミッション的に演じられた、メイゼルや寒川さん達が演じた文化祭の白雪姫。魔女も死なずハッピーエンド? というのが魔法使いと地獄と蔑まされた人類が織りなす「円環少女」という物語の救いのきざはし、になればと思うほど、今回も凄惨だっと思います。

どうなるんだろう、という中盤までの圧倒的な仁達の分の悪さ。そして、傷つくメイゼル。和解できないと思われた絆と仁の仲。
それが、ラストで一気に解消される様はすーっとしました。

早い話、仁がメイゼルとしちゃえば良いかな、なんて思っていましたが浅はかでしたね。煩悶しつつ絆が参戦するところの爽快感と来たら。
ええ、分かりました。仁はスーパーヘタレ。ヘタレ王子だから円環少女は物語を綴って来れたのだと。
だって、本巻で仁は、メイゼルに頬を打擲されて自覚を促されるのですから。

そんなヘタレがラストで覚醒したときは、遅いよ、この野郎ーと思いつつもコイツだからこそかなぁ、と変な安堵を持ったり。
殉教者で真の信仰者とも言えるエレオノールは変わらず、話を締める良い役まわりかと思いました。彼女がいないと、勝てないですし。聖女という役割を持っている、円環世界で数少ない良識の活躍は納得です。

絆の愛憎含んだ悩みの果て、再び手を取り合うところはじーんと来ます。怒濤の修羅場を越え、袂を別った仁と妹の舞花との最後の邂逅。うーん、脱帽ですね。
ままならない、ものとの付き合いというのはこのシリーズのある意味根幹かな、と思うシーンで合ったと思います。

生き残った変態たちサブキャラ達も描写は少ないこそ、印象深くありました。セラはいるだけで、インパクト有りますしね。
次巻でラストというのが惜しいと思いつつ、決着を速くみたいというジレンマに陥ってしまう。それくらい、このシリーズは好きですね。

本編が完結して、おちゃらけた短編集も出てくれたらな、と切にに思います。