ほうかごのロケッティア

「Give me a Go,no Go for Launch!!」

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)

ラストでロケットを打ち上げた時の爽快感。それを、この言葉を体現したストーリーだったと思います。
中二病を最悪な形で発露させて、一人の天才美少女の歌手生命を奪ってしまった主人公の褐葉とその少女、かぐやとの邂逅。
最悪の、普通なら触れ合うことすら厭うかぐやが主人公にロケットが必要だと打ち明けられて──。

主人公もヒロインも心に傷を負って病んでいた。かぐやの傷の象徴である、携帯にやどった宇宙人を宇宙(そら)へ戻すためのロケット。再び、前に進むための絶対に必要なモノとしての象徴として描かれています。
本書は良く計算されていて作られているな、と読み終わって感じるのですがそんなことは良いのです。後半、ロケットの打ち上げに失敗した後の疾走感が、凄かったから!

校舎の一部を破壊し、積み上げたものが一瞬で無くなった……かのように見えた中で、一つ残ったモノ。
ロケットを打ち上げたい。人を傷つけ、生きる目的がない主人公が手放せなかったもの。
そこへ至る過程が、きつい描写と楽しげなロケットを作る描写がきちんと書かれていたから納得できたと思います。

キャラも魅力的だったのですが、ちょっとスローだったかな。
中盤くらいから、ばっっと花開いたような雰囲気です。
ヒロインのかぐやの描写が多めで、権力の鬼、と見せかけた恋する女の翠も良い感じでした。もうちょっと描写されていたら、もっと凄かったかも。
あと、ロケットを実際に作る、お隣高校の島実のロケット部の面々も良かった。落ちこぼれの少年達でしたけど、個性的で芯がしっかりしていましたね。

前半部のクラスカーストの話はかなり、陰惨とも思える描写が厳しいかもしれないけれど、本質はそこではないので読み終えれば楽しいよ、と思っています。
またもう一度読み返してみたい、そんなラノベでした。