深山さんちのベルテイン

「色仕掛けであります! 大人の色気であります! ベルの魅力にコタロー殿もメロメロであります、メロメロであります!」

深山さんちのベルテイン (GA文庫)

深山さんちのベルテイン (GA文庫)

母が単身赴任で高校生の子が一人の深山さんちの琥太郎さん。ちょっと女装趣味な彼とメイドロボのベルテイン(通称ベルさん)を中心にまったりとした日常を描いた短編連作。

まずもって、ベルテインが可愛い過ぎる。いや、ベルさんと呼ぶべきか。もう、彼女の行動の一つ一つが可愛いのですよ。可愛いのですよ! レンコンが大好きなという一風変わった嗜好もまた上手く描写されているのが凄いかも。
ちんまいベルさんが独特な言い回し(言葉を重ねる)をしながら、きゃいきゃい描写される所が本当に素敵。和んで頬が緩んでしまうこと必至。

そんなベルさんは最先端の摩訶不思議な科学力のメイドロボ。普段はぬいぐるみのようなちんまいくて可愛い形態。夜は妖艶なお姉様で主人公の寝床を襲う──。と、くればwktkな光景かと思いきや。
主人公が女の子に憧れる女装少年なんですけどね!
そう、えろえろにはならないのです。多少、どきり、とする場面もでますが、発展しません。
単身赴任する母が「息子」を正しく男の子に導くために同居させたベルさんの役目は中々果たせそうにありません。だが、それがいい!(読み手的に)
ベルさんも愛する琥太郎を真っ当な男にすべく、日夜”誘惑”するのですが、難攻不落。そのギャップがまた面白いのですから。

あとこの作品に愛着を持ってしまうのは、穏やかな空気。主人公達を取り巻くキャラが簡潔だけど、きちんと立っていること。
主人公に惚れている幼なじみの理々。日々、まっとうな男の子に戻したいと思いつつ空回る所はお約束なんですが、気持ちも分かるので憎めない。
果ては、琥太郎の容姿にいちゃもんを付けて毎週、襲うがあっさりと負ける不良の先輩。これが何気に人情味があってどうも、主人公が男の娘と分かっていて惚れているような……。

と、不思議にのんびりとした独特な空気を醸し出していて楽しい。犬のディアナ様も擬人化されていないのに重要な役割を持っているこの世界。読みながら、こんな連中と一緒にいたら楽しいだろうなぁという思わせます。

主人公の琥太郎も女の子に見える自分が好きという周りからはある意味困った性格なのですが(最悪、アレをとっても良いかと思うくらいに)、のんびりとした優しい仕草にそれはそれでいいんじゃね? と思わせるのは今の時代には合っているのかも。
ええ、琥太郎が男の娘で良いと思いますし! このままベルさんとほんわかした生活を続けて欲しいな、と思いますので。