お嬢様のメイドくん

「今は、女の子ですよ、この通り! お嬢様の同級の、女子校生だ!」

お嬢様のメイドくん (一迅社文庫)

お嬢様のメイドくん (一迅社文庫)

天涯孤独な美少年雪風が従者として尽くすお嬢様からの命令。それは、「女の子になりなさい」という命令だった。そして、転入させられた女子学園で、革命生徒評議会(略して生徒会)という凄いカリスマを持ちつつ少々残念な少女達と関わることに──。

最近流行の男の娘モノで、愉快な学園コメディと見せかけて……。
やーらーれーた。終盤、予想しなかった展開となり良い意味で裏切られたました。すごいね、コレは。

主人公の雪風やヒロインのお嬢様、とりまく生徒会の面々やライバル達のどれもが個性的なキャラでとても魅力的なのよ。
裸族だけどカリスマ性溢れる、九葉議長。王子力に満ちた男装の麗人、ヘイゼルベル王女に自称「変態淑女」のロリ少女奇那。彼女らの行動が面白いし、惹かれる。

話の方も男の娘の雪風が生徒会長候補に祭り上げられ、展開されていく選挙戦がコメディタッチで楽しく描かれ、ぐいぐい引っ張ってダレません。
しかも、オタクや歴史などの小ネタを出しゃばりすぎず、小粋に振りまく部分も心地良かったのです。
各章のサブタイトルも有名なマンガや小説を捻ったモノであるのも楽しい。エピローグは「ここはスノーウィンド」ですよ? 確かに「ここは、グリーンウッド」よろしく変人が集まる寮だもの。座布団一枚!

と、ここまでなら良質な男の娘モノで終わるのですが……。

終盤、お嬢様の咲夜が帰ってきてからはそれまでの流れと変わり、ガチでシリアス。しかも雪風の境遇やしでかした事がもう、重いのなんの。これ、どうやったらハッピーエンドになるのだろうとページをめくりながら戦々恐々としてましたもん。

幼いときに咲夜を復讐と称して生涯消えない傷を付けてしまった雪風。彼の間違った償いが、生徒会の面々に諭されて本当の想いに気づき、咲夜に告白するところは良かった……。

ただ、一つだけ残念なのは一冊で綺麗に纏まってしまった事で、続刊が難しそうなところ。生徒会の面々との厄介だけど面白い学園風景をもう少し楽しみたかった!
続きが出るアイデアが著者と編集さんに湧き出るといいな。