とある飛空士への恋歌 5
交わした約束を、果たそう。
「踊ろう」
「お祝いの踊りを」
少年少女たちの翼が、千万無量の色彩のうちへ翻った。
- 作者: 犬村小六,森沢晴行
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/01/18
- メディア: 文庫
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文句なしの結末でした。タイトルにある恋歌。これが、二重にも三重にも響くストーリーだったと思います。メインはカルとクレアの壮絶な境遇の中で歌われた幸せの愛歌であれば、歌う事が出来なかったアルの悲歌。そして、チハルを身を賭して救ってくれたミツオへのとこしえの永別を奏でる哀歌。
苦しい境遇を描ききった本作は全てを越えて、眩かった。ラスト、全てをさらけ出した上でクレアを救いに向かうカル。語られてはいないけれど、ハッピーエンド。引き裂かれたお姫様と王子様の結末はそうでないといけないから。あえて、読者に任せた物語の閉じ方は卑怯ではないと思う。想像する自由を残してくれているのだから。
多分。
作者が思いつつ書かれていなかったところは往々にあると思います。
それを知りたかったという欲求もあるのですが、これが一番良かったかな、と感じます。端々にちりばめた所の「行間の間」を想像することの楽しさを残してくれたのだから。
戻って、それぞれの道を歩んでいく皆の姿を想うだけで良い。
それ以上言葉を費やすのは読んでいる時の妨げになったのかな、って感じるくらいにのめり込めたので。
今回もそうですが、作者の犬村さんは光景として映える文章を書く方だなぁと嘆息しました。
イスラが空の彼方の障壁で虹へ消えゆく場面は荘厳で、映像が脳裏に浮かぶ凄まじさだった。ああ、本当に映像で見たい、映画館のスクリーンで見たいほどに。
恩讐の彼方、蒼穹の果ての眩しさの青春群像として一級のものでした。こういう作品に巡り会えるから、ラノベを読むのはやめられません。
哀惜という言葉をひさしぶりに思い出した気がします。