ココロコネクト ミチランダム

「テメエの人生だろうがっ、勝手に好きなように生きとけっっっ! そしたら後は勝手に周りが……アタシが……受け止めてやるよっっっ!」

ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)

『感情伝導』それがふうせんかずらが文研部の5人にもたらした災厄だった。自分の心で思ったことと感情が、他人に伝わるというプライバシーが無くなる恐ろしい現象。そして、伊織の心が蝕まれてクラスから浮き上がり、白い目で見られていく──

ものすごい熱量ある描写。それに翻弄されてくらくらと酩酊感があるほどのめり込んで読んでいました。いや、本当に素晴らしい青春の衝動と言えばいいのでしょうか。

ふうせんかずらの度重なる騒動で自身を見失ってしまった伊織。人当たりのよい、彼女にしたいと思わせる雰囲気だったのが他者と大きな壁を作って、ふさぎ込んでいく所が痛々しかった。
文研部のみんなからも離れて、一人暗い感情に落ち込んでいく所と、手を差し伸べようとする仲間達とのすれ違いが生々しくて、何とかならないか? と読む方ですらはらはらしてしまいます。

そんな彼女に体当たりで当たっていく稲葉んが眩しかった。自分の太一への想いを赤裸々に(誇張ヌキで、一人で火照りを鎮めることを暴露!)伝えてまで、伊織の本心を聞き出そうとするところはこちらも赤面とともに胸が打たれる内容でした。

あー、本当に青春の良いところ、恥ずかしいところを描ききったなぁと。シリーズを通して楽しんでいましたが、断然ミチランダムは輝いていたと思います。
最後は、大団円。ただ、伊織と太一のもの悲しい恋の終わりがほろ苦い余韻としても残る話だったと思います。それが本巻の容赦ない所だったのかもしれません……。

ココロコネクトの素晴らしいところは、文研部の5人が本当に活き活きとしている部分ですね。ヒロインだけではなく、太一や青木もとても良いやつでみんなの行動や呟きを読むのが楽しい。
唯と恋人になった青木も、今回の騒動できちんと考えて動く。仲間を想うところが共感できてしまうんですよ。
もう、あれですね。読んでいる自分が文研部の6人目の部員になっているような錯覚をもってしまうほど彼等、彼女らに仲間意識を持ってしまう。
そんな作品って中々ないから諸手をあげて言いたい。本当に、ココロコネクトが好きだと。

伊織と太一の素敵で、もの悲しい初恋が終わってしまったけれど新しい恋も始まった。稲葉と太一の未来がどうなるかは、ふうせんかずらでも邪魔できないといいな。

どのキャラについても書き残そうと考えたらキリがないので、もう一人のメインヒロインである稲葉んについて。
……稲葉んの可愛さと格好良さがこれでもかと描かれた巻。クール・ビューティだった彼女が、太一に恋してしまったら──。
もう、恋する女の子は可愛いというのを越えてすごかった。伊織を選んだ太一(絶賛爆死)に結果的に振られてしまいながらもバレンタインのチョコを渡すことに一喜一憂するだけでも、お腹いっぱいになれるですが、それだけに終わらない所がもう!
太一、タイチ、たいち! どんだけ好きなんだよもうっ! でもそれがとても素敵で、まっすぐで応援したくなってしまう。
不良に頭を殴られたあと目を覚ました太一へのだだ漏れの感情伝導。もう、どんだけ好きなんだっ! だが、それが良いのですけど。もう可愛い女の子じゃないですか。
そして、太一に付き合おうと言われた稲葉んの描写がね! 膝を叩きたくなるくらいに眩しくて。お幸せに、コンチクショウw

稲葉ん、良い娘というかもう本当に素晴らしいの一言でした。ここまで引き込むキャラクターってあんまりいないと思います。
最後にもう一度。本当に読んでいて良かった。

このあとどうなるのか。続きが想像できないからこそ、待ち遠しいです。