メガクルイデア

「許さない! 許せないよ! 許すもんか……!」

蔑まされることすら気にしないと思っている主人公。最低の家庭環境で育ち、酒に溺れた高校生。そんな自らも人間の屑と思う少年が出会った、目をアイマスクで覆った少女。彼女が属する、全獨連という勢力に目をつけられて──。

読んでいて、終わりがどうなるかさっぱり想像が出来ませんでした。いや、ホント狂っている世界を、描ききっているなぁ、と。
そのくせ、その物語は不快じゃない。主人公の高校生がアル中で、見下されることに納得しているというだけで逆に惹かれてしまう。ラノベでこういう世界観って中々ないものですよ。

不条理と異質な世界観を積み上げていて凄かった。暗い話で主人公が、これはもうひでぇ、屑だろうというくらいなのに不思議と嫌悪感までいかせない。ひたすら、へりくだる。でも、未来の希望なんて持っていない。そのくせ、本当に死にそうになると、もがいて生きようとする。
ある意味、「生命」としての原点を見せているからかもしれない。

メインで関わるキャラはどれも欠損しているのだけど、一番欠けていて、求めているのが他者からの容認。言い換えれば愛なのかな。愛を知らない主人公と、愛を求めて得られず、または裏切られたヒロイン達。物語の終盤で、それが表面に出てきた感じ。

主人公に手ひどく裏切られたダリアや、兄の代理に(そして、愛する兄に命じられての)主人公に身をゆだねる歌志子。それが今後どうなるのか。多分、想像している以上の驚愕を見せつつ狂った愛を見せてくれるのかなぁと続きが気になります。
ダリアの主人公の想いの深さは、とても惹かれる。愛している事と憎しみを持つことって強くて、しかもベクトルが変わる真逆になりやすいから。しかもそうなったときにどうなるのかというのも含めて。
また、敵となるべき人物も、中々な壊れっぷりなので、両者の邂逅がどうなるのかも、じれったいっ。読みたい!

あと、部分部分で出てくる滑稽な部分が何となく演劇チックに感じられたのも面白かったと思います。日本風だけど、そんなアホな名前無いだろうとか、今風にした落語なのかと思う名称にもツボを突かれたりしました。ああいう遊び心はとても好き。