倒錯クロスファイト

「失敬な! パンツになんか興味があるものか!どうせスパッツ履いているくせに! 僕は脚を凝視していただけだ!」

金縛りに遭い、目を覚ますと眉目麗しい少女が身体の上に浮いていた。神々しくも眩い黒ストッキングの御脚を眺めていると、彼女は語り始めた「貴様には繊維を代表して戦って貰う。黒ストッキングの戦士としてだ」そして、タイムリミットと呟いた消えた。ハヤッ。謎すぎるもう少し説明をちゃんとして行け──

素晴らしきおバカラノベ。オタネタもさりげなく混じらせつつ軽妙で、テンポが良いのです。理屈抜き、勢いで突っ走りうちに読んでいて爽快感に満ちてしまうと言えばいいのか。とにかく面白かった!!
ハッキリ言えば変態。女神に選ばれし繊維の戦士達というが、用は下着(に属するもの)をフェチ的に愛する者達。その崇拝するもの……ショーツだったり、黒ストetcのパワーを使ってのバトルモノ。
そう。布の戦い。つまり、クロスのファイト──クロスファイト! ダジャレかよっ! これだけでも脱力するのに、本編もネタを極限まで放り込んでいる、莫迦らしく描いた作品でした。

こういうのが大好き。というか、愛しています。もうあれです。なんで好きかどうかも自ら問うのがもどかしい位に感覚にマッチしたとしか思えない作品ってやっぱりあるのですね。ええ、主人公同様に脚フェチですからっ(……って黒スト穿いたりしません。理由は本作のオチと同様)

シチュエーションが既にヘンです。イケメンハーフ主人公の影の側面である黒ストフェチ。それを突かれて布の戦士とされてしまった彼と、スパッツの戦士の衣被ユイとの邂逅。そして、強大な敵、ショーツ仮面(ユイと因縁浅からぬ)のため共同戦線を張る故の同居。って、いきなり同居なのかよ! というツッコミも野暮な程に流れが上手かった。
ヒロインの魅力や、フェチな布の戦士達のあほらしくも真摯な情熱に、主人公のユイへの積み重なる想いの果て。

ヒロインのユイはツンデレテンプレートと言われたらそれまでなのですが、彼女の魅せ方が上手かった……。いやそれだけではなく、その他主人公の友人を含めて人や状況の描写がテンポ良くかつ情景が浮かびやすかった、と読み終えて感じます。
場を描くのに優れている、という見方も出来るかと。
本当に話を読んでいて楽しくてしょうがないのですよ。

ぶっちゃけショーツ被ったり、黒ストを穿くような話なくせに、ユイに恋してしまう主人公の真っ当なボーイ・ミーツ・ガールになっているのは驚きでした。怪作と言っても良いくらい。
しかも、布バトルの勝者に与えられる何でも叶う願いを、ユイが使った結末はベタですけど、まさに望みの結果。
変態わんさかラノベなのに爽やかな読後は反則なほど、良く出来ていたかな。
変態に偏見無く、理屈ヌキに笑いたい人は楽しめると思います。

綺麗に纏まっているので続きは無理だと思いますが、別作品の『喰-kuu-』共々気になる作者さんです。

余談ながら。主人公の姉さんも出番は少なめですが、コマンドサンボを極めるくせにドジっ娘とか可愛い生き物だったのもツボの一つでした。
あり得ないと思いつつ、カメコで理性ある芸術者の友人共々、活躍している続きを読んでみたいと感じます。