問題児たちが異世界から来るそうですよ?

『己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて、我らの”箱庭”に来られたし』

とても面白かった。キャラの立ち方、先が読めないストーリーの流れ。惹きこまれて一気に読んでしまう話。
冒頭の通りに、全てを捨ててというか、問答無用で捨てさせられて、異世界に召喚。
現世で力をもてあましたキャラ達がいきなり、ですよ? そして彼等を呼んだグループが、破滅の瀬戸際だった──。
しかし、『問題児たち』そんなことはどうでもいいやという感じで、トラブルにガンガン首をつっこみ、引っかき回す。

たまらない。この筋立てだけでもぐっとくるのですが、実際に読むとそれが本当に面白くて、先が気になってしまう作品です。

主人公達、異世界に召喚された三人のキャラが異能というか強すぎ。でも、それが話を回すために自然に流れているのが良かった。
召喚された彼等から見たら、異世界。そこで『ギフトゲーム』と呼ばれる異能バトルが「世界のルール」としてある。そんな世界で力のほとんどを喪失し、解散寸前のグループに招かれた、と。
それを危機ではなく「嬉々」として参加して、強大な敵に立ち向かうという冒頭の流れがしびれます。

いい。とても良かったです。召喚された三人が、現実世界ではある意味、畏怖され弾かれている。そんな彼等彼女らが十二分に「暴れられる世界」。ああ、もう! これだけでもわくわくできる舞台装置ですよ!!
そして、キャラがまた立っている。第三宇宙速度の拳を持つ荒くれ者。そのくせ、コイツが頭の回転が速い。そして、弱小グループ(コミュニティーと呼ばれる)の弱点を喝破して、それを補う行動力。言葉で相手に強制力を強いるお嬢とかケモノを含めた人外の言葉とその能力を使うことが出来る無口系少女。
よくぞやったなぁ、としか思えません。正直、作者の筆の進むまま、読んでいくのが純粋に楽しい話でした。

最悪な状況を、覆していく主人公達。その姿がこれまた活き活きとして眩しい。目的が決まっている中で、キャラがいかにも彼等自身の判断で動いているなぁという描写が良かった。

才能を生かし、対戦者で決めたルールで勝負を決めるという流れは良くある話ですが、本作ではとても効果的に描かれていた。
最後までダレること無く語り終えたという意味でも満足感でいっぱいです。

読んだ感想としては主人公が腕力が強くて、状況の先を見る頭の良さがなんとなく水滸伝魯智深を彷彿させます。登場人物も多いし、根拠地は最弱、敵は魔王という最強さ加減。そういうのも、水滸伝っぱい雰囲気を感じたり。コミニュティーの結束の元が「旗」という設定もあってなおさらに。
次巻以降、強大な敵に仲間が集うという流れだったら最高かな。 そうなれば1巻の描写を見るに長期大河ものになっても書ききれそうな流れ。そういうのが好きなので、個人的には是非に、そっちへと思ってしまいます。

キャラ的には、メインでは戦わないけれど主人公達を召喚した黒うさぎがツボ。壊滅寸前のコミュニティーを献身的に支えるわ、先輩の危機に身体を売ろうとするわ……。モティーフになった神話をベースに、なんて良いキャラを描いたものかと。
ノリも良いし、ほんと良い娘です。お持ち帰りしたいっ!
……まぁ、世迷い言は置くとして。

とりあえず、中ボスな敵は退場させられたのだけど次もあっと言わせる敵が出てくるのだろうなぁ、という期待をさせる筆力も嬉しい作品だと思います。
次巻が出る夏を刮目してまっております。