脱兎リベンジ

「だからさ、ウサ吉が戦うってなら、私も一緒に戦ってあげる! ウサ吉を散々嘲笑ってきた、このクソッタレな世界と!」

脱兎リベンジ (ガガガ文庫)

脱兎リベンジ (ガガガ文庫)

孤独、不遇、侮蔑。それらを紙クズのようにブッかます仲間。これは最高にイカした青春モノだ!

冴えない容姿にオドオドしたコミュ障的な話し方が災いし、クラスでも疎んじられより、存在自体を無視されている主人公。彼が唯一の支えとしているギターを弾く場所が所属している軽音楽部にもない。そんな彼が、物置扱いされている空き教室に追いやられたとき、一人の少女と出会って──。

いや〜、読んでいて楽しい楽しい。主人公が彼を貶めていた軽音部の部長に挑戦状を叩きつけて、秘めていた才能が花開いていくあたりからのめり込んで読んでいました。

主人公とヒロインの兎毛成や彼女の友人達はみな高校という世間から爪弾かれたスクールカーストの底辺に位置しているのだけど一つ大きな違いが、輝き。
主人公は諦観し、「駄目な自分」を受け入れていたのに対して、彼等は、強い個性とその才能故に周りから弾かれていたのだから。そんなヒロイン達の姿に触発され、女の子の前で嗚咽するほどの屈辱を受けてから、逃げずに戦っていく姿が心地良いのなんの。
上手く行きそう……と思ったら、窮地に。そんな先を気にさせる起伏もあって、読み終えた時の充足感は大きかった……。

主人公とヒロインの関係性の描き方も良かったですね。表向きは、芯が強くて凛々しいヒロインの潔さに惹かれて立ち上がったように見える主人公。実は、それ以前にギターを弾く切っ掛けとなる縁が……なんて流れは、この話には上手く作用していたように思う。
それがあって、輝いてく主人公の姿をみて思う所があったヒロインが救われていく様は、ベタだけど胸に沁みた。
そんな彼女が友人の不遇を感じ、辺りはばからずに泣くことが出来るのは素直で素敵だとおもう。最高な先輩だよ、ホント。

サブキャラもまた魅力的で、主人公に力を貸していく所も熱くなれるいい要因でした。それぞれ心に抱えているものは軽くないけれど、前向きさを失わない姿は好きですね。
金シュロ、あんな疑いを掛けられても、己が信じる道を進み続けるのはすごい。格好良いというのはああいう姿ですよ。

綺麗に纏まった感はあるのですが、機会があれば主人公達とその仲間達の話を読んでみたい、そんな作品でした。
荒削りな部分もあるけれど、好きな作風なので次作も期待してます。