灼熱の小早川さん

「すろーがん……」
千尋は眼鏡を曇らせながら、手元も見ずに軽やかに打ち込んだ。
『厳しい学校生活!』

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

特出した問題児はいないのに、美化委員すら選出することが出来ない1-B。その問題クラスを正しく導こうとする女子が一人。規則の鬼、委員長オブ委員長。髪は肩に掛かるか掛からない程度に切りそろえ、もちろん眼鏡装備ですよ。

面白かった。……面白かったのだけど、最後が駆け足だったのがちょっと(いや、大分)もったいなかった。
寄らば斬る! と正論で立ち向かい、やる気がなく弛緩したクラスに規律を! と奮闘する所にスパイとして送られた主人公が逆に感化されて……。
誰が一番悪い訳でもないのに、皆が空気を読んでしまってやる気がないクラス。それが悪化すれば、学級崩壊へは時間の問題。
ヒロインの小早川さんが過去の苦い体験から、規律の鬼となり皆を規則の恐怖政治に落としていくという部分がコメディっぽくもスクールカーストの陰を上手く取り上げて読み手を引き込む感じは、田中ロミオらしい雰囲気で好き(C†Cみたいなバランスさ)。
43ページからの厳しくした改正校則について1-Bでのテスト試行を巡る描写は好き。そこでの小早川さんのターンは、テンポやリアクションなんてすげー楽しい。

主人公も本来は空気を読み、排斥されずに上手く立ち回るが信条だったのに、いつの間にかそれが崩されて。あまつさえ、小早川さんが異性として気になっていくという流れはベテランだなぁと思う上手さ。
ただ、小早川さんが折れてまた復活するまでの部分の描写がほとんど無くて、ヨリを戻すところも「えっ? えっ??」とちょっと戸惑ってしまったかな。

とはいえ、読んで楽しめたのも事実。もう100ページ、書く時間があったら絶賛していた気がするのが、本当に惜しくて切ない。