いもうとがかり

「いつか、もう一度。わたしに告白してくれないか。そうしたら、今度こそは地球人の恋愛の意味が、理解できるかもしれない」

いもうとがかり (MF文庫J)

いもうとがかり (MF文庫J)

成功確率、0.0000001%。それでも、告白しなくては0%。清水の舞台から飛び降りる覚悟で、意中の人一片愛に告白し、「つきあってもいいぞ」と言われた主人公。しかし、彼女は愛さんの妹、恋だった。しかも、彼女は自分を木星人と思い込んでいる娘で……。勘違いから始まった、恋人関係の行方は──。

甘酸っぱいくて好きです、こういうの。不器用で初々しい初恋の可愛い話でした。
ヒロインの恋が、木星人と思い込んでいて周りから浮いているという感じで始まる、本作。電波ゆんゆんの痛い話かなぁ、と思ったらさにあらず。真っ当な正統派恋愛ものでした。ちょっと意外ですが、良かったです。文中のノリも悪くないし。

いもうとがかり、というのも姉の愛から言われたモノで、なんぞ? と主人公と同じく思ってしまいましたが、読み進めるとなるほど……。姉妹二人で生きていかなくてはならなかったと考えれば、解るかな。
主人公の恋へ惹かれる書き方は、ゆっくりでしたけどそれ故に納得出来たと思います。はじめは、いかにしてすっきりと恋との恋人関係を解消して、本来の想い人である愛に告白しようと考えていたわけですが。
いや、もう恋が可愛い子なんですよ。木星人として地球人の意識を学ぶと称して主人公にデートをお願いしたり、水泳を教えてもらって喜んだり。そして姉をよいしょする主人公に嫉妬してむくれたり。
おま、普通の地球人の女の子じゃん。それも、恋する乙女の! って途中から突っ込みまくるくらいにw

そんな彼女に、気づかず惹かれていく主人公の気持ちは分かりますね。そして、恋からねだられる、もう一度の告白。悩むよなぁ。最初は好きじゃなかったのに、今では愛とどっちが好きか考えてしまうほどだから。いや、考えるようになっている状況でもう恋の方に傾いているんだろうって読みながら思いますけどね。
恋も気づいていたから、冒頭の台詞を主人公に投げかけたんでしょう。そういう意味で、恋も恋する女の子として不安だった。それを、受け止められなかったのは……若いからしょうが無い。
ちゃんと最後にフォローできたしね。

作品としては、起伏に欠けるかもしれない。それでも、二人の初恋の話は良かった。恋が木星人を自称するようになったのか。主人公がどうして、過去を忘れてガチガチの数学や論理を第一に考え、行動するようになったのか。二人の過去に関係があるようなにおわせ方など伏線もきになりますので、続きを待っています。