東雲侑子は短編小説をあいしている

「じゃあ、これは三並君の」
「は?」
「三並君も、ストラップ、付けていないでしょ?」

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)

ふとしたことから、高校生作家で同級生の東雲侑子から持ちかけられた提案。長編小説を書くための取材として、恋人として付き合って欲しい。物静かな少女からの突拍子もない願いを受け入れざるを得なかった主人公は、奇妙な関係を始めたけれど──。

良い恋愛小説。狭めたいけど、近づけないというもどかしい距離感が読んでいて甘酸っぱくて良かった。もう、恥ずかしいくらいストレートな青春モノですよ!

主人公の初恋の佳人が実は兄の恋人だったと知って、告白以前に失恋しそれ以来もやもやとしたモノを抱えて友人関係にも趣味にも打ち込めない中途半端な状態を続けていた。そんな状況が変わる切っ掛けとなった侑子の提案。
疑似的な恋人という関係を続けるうちに、侑子そのものに気になっていく部分が急ぐことなく描かれていた。なので、家に侑子を上げたとき、兄(優秀で主人公がコンプレックスを抱いている)を素敵なお兄さんね、と評してショックを受ける様はなるほどなぁ、と素直に思えます。

それを契機に主人公の中で疑念が起き、二人の関係がぎくしゃくとする様は面白いと思う反面、自分の身に起きているようで痛いのなんのって。
侑子の方も主人公を気になっていたという事が分かり解決へ、というのは素直すぎる気もしますが、この話の流れならこれくらいで丁度良かったかな? という感じ。

余韻がある終わり方で、個人的にはこれで完結で良いように思っています。二人の関係を想像する楽しみがありますし。

にしても遊園地で二人で買ったストラップをお互いにプレゼントしてペア・ストラップの提案をする侑子が可愛いなぁ、こんちくしょうw