安達としまむら

「安達は? 友達いる?」
「んー……しまむらぐらいかなぁ」
「せめー」
などと言いながら、少し嬉しかった。

安達としまむら (電撃文庫)

安達としまむら (電撃文庫)

これはとても良い百合ラノベでした。読んでて顔がにやけているのが分かるモン。やべぇよ、うん。電車や喫茶店などで読んだら危険。

大きな事件の無い、ちょっと「不良」な女の子同士の日常。何となく授業をサボる安達としまむらが、学校の二人だけの空間で他愛も無く過ごすうちにお互いの「特別」になりたいと思っていく友情以上恋愛未満の描写が良かった。

作中で相手に近づきたい、というちょっとした気持ちの先の描写がともかく上手い。安達がしまむらの手を握るところや、キスした夢を見たなど、もう小っ恥ずかしい思春期らしい不安定さがにやにやを加速させます。

人付き合いが苦手な安達と、他にも友人を作れるしまむら。そんなしまむらのともだちの一人なのか、それともともだち以上の何かになれているのか? そんな事に悩む安達が大変可愛くて後半はもう完全にこの世界にはまっていました。

安達から見た、しまむらと彼女をとりまく人間の関係性がとても上手くて「ああ、安達がこういう不安持つのわかるわー」と感情移入させる作りは好きですね。
文章も綺麗で、背景を想像させるような映像的な印象も強かった。残暑という季節のけだるさや、廃線の踏切を越えてというような地の文が安達やしまむらがそこにいる風景を見せる、そんな感じ。

ホント自分の嗜好にぴったりのモノが読めて大いに満足出来ました。