白と黒の臨界〜壊れた彼女の見る夢は〜

「……ばかなんだから。ホント、トモ君のばか……」

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えっと、18禁です。なので、そっちに興味が無い人はとばしてね。

愚かで不様で、けれど綺麗な物語。
空が落ちてくるのを防ぐ『耐盤』という柱によって辛うじて守られている世界。その耐盤を支える『要の娘』(ある日突然塩の柱となって耐盤に消えていく)であるナツミに恋をしたトモヤは、彼女を耐盤に帰さないとある唯一の方法を実践し、彼女を手元に置こうとする。彼女の心を壊すという方法を──。

これ、結構胸に痛い話でした。陵辱で寝取られメインなのに純愛という倒錯した設定が上手くエンドに繋がっていたのが秀逸。もの悲しいけれど、余韻が良くてちょっと浸ってしまう所がすき。
ハッピーエンドではないけど、BAD ENDでもない切なさ。ティプトリーの『たったひとつの冴えたやり方』を評するによく使われる「とげだらけのボンボン」というあの感覚に似ている。ちくりとくる痛みと甘さが心地良いというもの。僕はこういうのがホント好き。

心を壊して、身体がそばにあるだけでいいのか? という意味で始まりは狂気なんだけど人を愛してしまうとそれもまた一つの解になってしまうというのが業なんだろうな。
最後、再び心を通わせて抱き合った後のナツミのモノローグはお約束だけれど優しさが切なくて。それがエピローグを読みながら、主人公と同じく後悔しながら一つの希望を見いだす流れは卑怯だわー(褒め言葉)

中編でページ数も少なめだけど、それがムダをそぎ落とした感じも良かったと思う。
読む人を選ぶと思いますが、僕はかなり気に入ってます。