ブラス・オブ・シェルオール 新世響奏の姫騎士I

「人の音楽を笑うな!」

音楽モノにハズレ無し、と良く言うけれど本作も面白かった。
高校生ながらトランペットの演奏に秀でた主人公が、異世界に飛ばされてその演奏技術を活かして戦いを止めるという流れが、終盤に陥ったピンチと合わせて上手く盛り上がったと思う。

異世界で出会ったリゼットと主人公が惹かれ合う理由とエピソードがまた納得できるもの、というのもすんなり世界に入り込めた感じでした。リゼットがその世界では禁忌とされている新しい音楽への渇望とそれを得ようとして周りから蔑まされ、心が折れかけた時にであった主人公と新しい音楽。初めは、曲に。そして主人公に惚れてしまうのが、リゼットの素直になれない照れ隠しの表現もあって大変可愛らしいものでした。

リゼットは、出会ったときは文字通り問答無用で主人公を拉致っちゃう暴君気質の娘かいな? と思ったけれど、読み終えて見ると本当に藁をもすがる感じで余裕が無かったんだろうなと分かる。そんなリゼットが掴んだ主人公との未来をもう少し見てみたい。そう思う読後で心地良いのはいいですね。

主人公も、音楽バカという描写ややるべき時はちゃんとやるタイプなので読んでいてストレスを感じなかったのもよいかな。冒頭にあげたセリフはリゼットを守る言葉だけど、自分が所属していた吹奏楽部の顧問の指導に疑問をもっていた事と繋がって叫んだところが上手くハマっていた。

サブヒロインのイリスや、強面でドレッドなラナといった個性的な脇役もいてしっかりと作品世界を支えていたのもよかったかな。イリスの過去はちょっと切なかったので、話が進んで彼女のエピも出てくれば話が拡がって面白くなるだろうな。