夏へのトンネル、さよならの出口

五秒くらいそうしていた。外では大体六時間に相当するキス。

 

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

 

 

ああ、まさに真夏に読んで良かった! そう思える良い恋愛モノでした。喪失感を抱えてただ生きていた少年が、幾つもの大切なものを取り戻して掛け替えのない一人の少女を得る話。ボーイ・ミーツ・ガールが好きなら、素直に楽しめると思います。

 

主人公が抱える後悔は、とても大きく読んでいて自分ならどうする……? というヘヴィーな背景なのに高校生ならではの瑞々しさや生々しい悩みを見せつつ、清々しい読後の余韻を与えてくれてやられたなぁと。

疾走感とか衝動とか。感情に訴える部分が強い作品だったと思います。故に細かいことを気にする人には向かないかも? 逆に、共感しやすい人にはハマりそう。自分は後者なので、終章前後はもうなんか心揺さぶられてた感じで主人公とヒロインのもどかしい気持ちが自分のモノとして思えてしまうような。だから、エピローグの雰囲気がとても良かったなぁ……。

 

さよならの出口。その意味は読み終えるとなるほどなぁ、と噛みしめるような何かがあってそういう意味でも良かったと思います。

 

夏らしい透明感と彩度の高さを文章の描写でも感じられたので、表紙に惹かれたら素直に手に取って読んで損はないです、きっと。