お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

「冷蔵庫に作り置き沢山放り込んで冷蔵庫圧迫するとか」 

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 (GA文庫)

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 (GA文庫)

 

 雨が降る公園で濡れたままの同学年の少女に傘を貸した事が切っ掛けで、一人暮らし同士の隣人というだけの垣根が取り払われ、手作り料理を食べる関係に発展して──。

主人公が他人への興味がとても薄く、学年一の美人で天使とまで称される真昼に対しても淡泊な対応だったのだけど。格言にもあるように男は胃袋を抑えられると駄目ですよね、な見本。

 

読んでいるとヒロインの真昼の仕草や反応などの描写がとても細かくて、目の前で見ているようなそんな錯覚さえ感じるような所がとても良かったです。

合鍵を貰ってパニくって可愛いテロを口にするところなんてもう、最高じゃないですか。そんな感じが散りばめられているのでもう素敵。

 

話としては大きな事件も、真昼が一人暮らししている原因が騒動を巻き起こすとかありません。淡泊な無関心男が胃袋を掴まれて、美少女の魅力に少しずつ発見しては戻れなくなっていく。まさに駄目人間になっていくお話。だが、それがいい

 

ヒロインの真昼がしっかり者で丁寧語で話す所が個人的にツボであったこともあり、大変楽しく読めました。つづきも出ましたら直ぐに読みたいと思います。

なろう発なので、そちらも読んで商業版との違いを知るのも良いかもしれませんね。

 

本書は好きラノ2019年上半期の投票数1位ということで手に取ったのですが、事前に読んでいたら投票したと思います。

ブラス・オブ・シェルオール 新世響奏の姫騎士I

「人の音楽を笑うな!」

音楽モノにハズレ無し、と良く言うけれど本作も面白かった。
高校生ながらトランペットの演奏に秀でた主人公が、異世界に飛ばされてその演奏技術を活かして戦いを止めるという流れが、終盤に陥ったピンチと合わせて上手く盛り上がったと思う。

異世界で出会ったリゼットと主人公が惹かれ合う理由とエピソードがまた納得できるもの、というのもすんなり世界に入り込めた感じでした。リゼットがその世界では禁忌とされている新しい音楽への渇望とそれを得ようとして周りから蔑まされ、心が折れかけた時にであった主人公と新しい音楽。初めは、曲に。そして主人公に惚れてしまうのが、リゼットの素直になれない照れ隠しの表現もあって大変可愛らしいものでした。

リゼットは、出会ったときは文字通り問答無用で主人公を拉致っちゃう暴君気質の娘かいな? と思ったけれど、読み終えて見ると本当に藁をもすがる感じで余裕が無かったんだろうなと分かる。そんなリゼットが掴んだ主人公との未来をもう少し見てみたい。そう思う読後で心地良いのはいいですね。

主人公も、音楽バカという描写ややるべき時はちゃんとやるタイプなので読んでいてストレスを感じなかったのもよいかな。冒頭にあげたセリフはリゼットを守る言葉だけど、自分が所属していた吹奏楽部の顧問の指導に疑問をもっていた事と繋がって叫んだところが上手くハマっていた。

サブヒロインのイリスや、強面でドレッドなラナといった個性的な脇役もいてしっかりと作品世界を支えていたのもよかったかな。イリスの過去はちょっと切なかったので、話が進んで彼女のエピも出てくれば話が拡がって面白くなるだろうな。

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらってもいいですか?

「だったら、バターケーキって、焼ける?」

過去、強大な敵と対峙し地上世界を滅ぼしてしまった人類最後の生き残りが、命でもって世界を守っている妖精と出会い、忘れたいと思っていた過去と再び向き合うことに──。

タイトルにだまされた。すんごく切なくて泣いた。
よくありがちな、コメディ系どたばと思ったら……。ガチで世界が滅びかけて、少女が魔物に自爆特攻して辛うじて生き延びているという、なにこのハードモード。

主人公が妖精のクトリと心を通わせて、過去を重ねつつ今を守ろうと思うようになるまでの部分がすごく丁寧でとても良かった。素直じゃ無いクトリが主人公に反発し、でも憎からずになり最後は甘えてくる所がもう超いいのよ。こういう展開たまらんのですわ。
また、途中に挿入される主人公やクトリそれぞれの過去にあったエピソードもまた、どれも心をちくちくと刺激してくるものばかりなんですよ。冒頭に上げたセリフ出てきた時、目から汗がぽろぽろ落ちてきて困ったわ……。

この話ってすごく救いの無い背景持っているのに、出てくる人物はみんな優しいのがもの悲しさをより強くしているように感じます。人情味ある緑鬼族のグルックや、鬼子母神のエピソードを思わせる自称「女の子」ナイグラード。こう自分の好きなところ突きまくる作品ですね。

以下、ネタバレ反転
そして、エピローグ。おい、まじかやめろよ……。もう続き読むしかないじゃないか。
どうか救いがありますように。

おいしいサンドイッチの作り方 スタンバイタイム

「だから君はモブキャラなんだよ。人間関係に波風が立つことを極端に嫌う」

これは良いボーイ・ミーツ・ガールでした。不器用な少年と少女の恋心に向き合う姿が悶えるくらい美味しくて最高。青い春を謳歌しているなぁ学生! って感じですね。

モブキャラ的存在から脱却して、友人たちや女の子と仲良く会話やイベントをこなす高二らしい生活を送りたい、と思っていた主人公。しかし誰とも会話できず、高二デビューが失敗したと思われた始業式初日。剣道部のイケメンに声を掛けられ、もう一人大人しくしていた女の子と三人で帰宅したときに一杯のコーヒーと出会って──。

主人公が親友になりたい! という男友達と、彼女にしたい! というヒロインへの接し方が真剣で応援したくなる感じだった。主人公とヒロインがぼっち系で友達を欲している似たものタイプで、すんなり接近できるのか? と思わせて親友ポジの剣道部のイケメンが吐露する意外な恋心のせいで三角関係の部分が面白く読めた。3人とも不器用な所が若くてまた良かったかな。

美味しいコーヒーを淹れるのに食べ物は壊滅的な腕前という喫茶店店長の天宮さんがまた、良いお姉さんキャラ。主人公がヒロインの決死の覚悟を理解していないことにダメ出しし、かつ恋の行方を応援するところは素敵でしたねぇ。キャラの中ではヒロイン以上に店長がすきです。おっぱい大きいし(最低)

設定的には空気読むスキルが喫茶店の有能な店員スキルになるというのも面白い見方でした。実際それで、主人公が料理スキルを上げていき愛しいヒロインとのために頑張る流れに載せるのは上手かった。文章のテンポもよいし、気軽に読んで楽しめる作品でした。
続き、読んで見たいですね。

ひとりで生きるもん! ~粋がるぼっちと高嶺の花~

「あんたに好きって言われたら、わたしはこう返すしかないじゃん!」

大変読んでいて心地良いラブコメでした。小っ恥ずかしく、青臭い青春の甘酸っぱさが十二分に描かれていてよかった! ライバル? も含め良い人ばかりで、ドロドロしたモノは無いので気軽に読めるのもいいかと。
頑なに可愛い女の子と距離を置く主人公が、彼の趣味である「お笑い」の才能に気づいた学校一の美少女にアプローチかけられて起きる騒動が読んでいて楽しかった。ぼっち的なネガティブな思考を気にせず突っ込んでくるヒロインの千紗が可愛かったですね。

性格の良い可愛い女の子なんか居るわけない、と思い込んでいる主人公というのはよくあるけれど、漫才のネタ添削という名の文通は面白い。アナクロな出会いという意外性が上手くて、掴みはokだったと思います。展開的にはラブコメの王道パターンの一つで読んでいて安心感があった。文章の方も漫才ネタを扱うだけあって、テンポが良くさくさくと読めるのもよい。

学園祭のイベントに出場するときの二人のセリフがまたよかった。「頼むよ、ツッコミ」「まかせろ、ボケ」。コンビ結成を求められ、最初断った主人公がここまでたどり着いた気持ち。その過程がねぇ。距離を詰められ、観念した主人公が開き直って自分の「好き」という想いに素直になった結果ですから。
そして、今度は千紗を追い詰めていく展開となっていくのがまた大好きですねぇ。こういうのってホント恋愛モノの醍醐味ですわ。

サブキャラもいい味を出していたかと。筆頭はヒロインの妹の七海がおませな幼女というずるいだろう的なキャラで大変宜しかった。姉との絡みも楽しくって、胸のことをバラされたあたりは、「あ、ひでぇ」と思いつつ笑ってしまったなぁ。
千紗の母の知り合いという喫茶301の老マスターも頑固者っぽいが実はツンデレという美味しいキャラでしたねぇ。ああいうオヤジキャラは好きなのでこれもポイント高かったです。
あと終盤にちょいと出て来た千紗ままん。これもさばけた人で千紗と七海の母という妙齢の美女。七海が冗談で言った、小五から40までというのはありでしょう、と思わずうなずいてしまったり(最低)

てなわけで、著者の次作もひとつ恋愛系でやってくれたらなぁと期待しています。

好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年下期

好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年下期に参加します。
上期はホントに読んで無くて参加しようもなかったのですが、今回は違います。ちゃんと読んでいましたので(とはいえ、まだ全盛期に比べては少ないけど)。
今年はもっと読むぞ、っと。

GランDKとダーティ・フェスタ

GランDKとダーティ・フェスタ (ガガガ文庫)

GランDKとダーティ・フェスタ (ガガガ文庫)

【14下期ラノベ投票/9784094515039】

薬屋のひとりごと

【14下期ラノベ投票/9784072981986】

アルジャン・カレール 〜革命の英雄、或いは女王の菓子職人〜<上>

【14下期ラノベ投票/9784047299757】

レイセン File7:誰も、あなたを放っておかない

【14下期ラノベ投票/9784041015353】

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(2)

【14下期ラノベ投票/9784040702322】

銀河戦記の実弾兵器 1.高校生の俺が目覚めたら宇宙船にいた件

【14下期ラノベ投票/9784906866984】

魔装学園H×H(3)

【14下期ラノベ投票/9784041020111】

俺、ツインテールになります。(8)

【14下期ラノベ投票/9784094515244】

ソードアート・オンライン プログレッシブ(3)

【14下期ラノベ投票/9784048690966】

落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国VI

【14下期ラノベ投票/9784040669915】

2014年は、なろう系を大手出版社もなりふり構わず出し始めたなぁという感じが強いです。
正直、弾は撃ち尽くしたように思うので今後どうなるか。
ジャンル的に言えば、戦記モノはもう十分ごちそうさまという感じなのでMW文庫などのキャラノベでもなく、ラノベでの手軽な学園ラブコメ系がまた流行らないかなぁ、と個人的に思ってます。

人類は衰退しました 平常運転

「おはようございます。え? いえ、ちっとも待ってなんか居ませんよ。服? ありがとう」

本編完結後の後日譚。サブタイ通り、平常運転の妖精さんゆるふわコメディ(ほんのりブラック風味)で楽しめました。
わたしと助手さんの少し進んだ関係がまたよろしかったですね。視察と言い張る、助手さんとの外での休日出勤。服を褒められて嬉しいとか、お弁当を作って助手さんと二人きりで食事を楽しむとか、きゃっきゃうふふ……な展開にすんなり行かないのはお約束ですね。

BD特典だった掌編のわたしがヘンな村訪問の旅行編。これも面白いアイデアが詰まった話ばかりで楽しかった。お菓子の腕で女王になるという南北の妖精さん争奪戦は良い意味でバカすぎ。北の女王様の圧政(笑)に耐えかねた妖精さんが脱北してくるとか、しれっと黒いネタもあって、ああ、田中ロミオだなぁと笑いながら読んでいました。

ちょっとしんみりしたのは、旅行編最後の孤児を集めた学校の話。妖精さんがお菓子を作る人間を育てちゃえ、という流れはアイデアとしてなるほど! と思ったんですが、ラストはぶっちゃけ妖精さん投げっぱなしでひどい。わたしが訪れなかったら大変な事になっていたんでは? とも思ったり。

とまれ、本編が終わっても面白さは変わらなかった。また、そのうち続きが読みたいですね。思い出したかのように数年後、というレベルでも構いませんので。

そうそう。後書きでしれっと新作のラノベの話が紹介されていてびっくり。
剣と魔法のファンタジーですか。期待しちゃいますね。地味なりに自分らしいものを書ければ、と謙遜していますが。田中ロミオが普通に書いたら、普通じゃないのができあがるよね。普通。
なので、期待してますわー。